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『六人の嘘つきな大学生』感想 ちょっと就活のこと思い出した

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久々の読書感想です。

今回読んだのは、浅倉秋成さんの『六人の嘘つきな大学生』です。

就活の最終選考として行われるグループディスカッションを舞台に起きた、ある事件について真相を探していく話です。

就活をテーマしているだけあって、現在行われている就活に対する批判のようなものを感じる部分もあります。自分が就活をしていた頃のことを少し思い出してしまいました。

以下、多少のネタバレも含む可能性があります。

読了の方、少しくらいのネタバレは構わない方のみお進みください。

簡単なあらすじ

2011年に行われたある会社の最終選考として行われたグループディスカッション。当初予定では、あるテーマについてディスカッションを行い、結論を出すというもの。最終選考メンバーは6人。内容次第では全員に内定を出すと告げられる。

テーマのヒントをもらい、実施は1か月後。この期間で準備と交流を深めていきます。そんな中、直前に告げられた「内定は1人、グループディスカッションで誰に内定を出すか自分たちで決めさせる」という変更。

これをきっかけに事件は起こります。事件はグループディスカッション中に現れた、白い封筒を巡るもの。中には選考メンバーのネガティブな過去についての情報。「犯人」によって掻き乱されるディスカッション。果たして誰が内定を勝ち取るのかというストーリーです。

そして8年後の現在、「犯人」の死によって、ある人物が事件の調査を始めます。だんだん明らかになる過去の詳細と真実。就活に対する問題提起のようにも感じられるストーリーです。

他人のことは一面しか知らない

月

ストーリーの中では、6人のメンバーは交流をしていく中でお互いのことを知っていきます。しかし知ったと思っていたそれぞれのことは一面に過ぎなかったのです。選考が始まって、知られたくない過去が明らかになることで互いが互いを信用できなくなっていきます。

でも、それはそうですよね。仲が良いと思っている友人でさえ知らない一面に出くわすことはあります。作中で月の例えが出てきます。月は地球に対して表しか向けないというものです。月の自転と公転が同じ1日なので決して月の裏が地球から見えることはありません。月の裏は、表に比べてボコボコしています。きたない裏を見せず、きれいな方を見せているというのは人も同じかもしれませんね。

就活って結局なにを観てるのか

先ほどの、他人のことは分からない、ということにも繋がりますが、結局就活の選考って何を観ているんでしょうね。

親しい人でさえ知らない面があるのに、たった数回、数時間話しただけで何人もの応募者を必要な人数まで絞っています。面接では立派だったのに実際は全然仕事ができない人、落とした人がめちゃくちゃ優秀だった、なんてことは絶対起きていると思います。

でも、この方法しかないから今までもこれからも続くのだとは思いますが。

僕自身、数年前に就活をしました。別に都会の人気企業に行くつもりもなく、地元のそれなりの会社に行くつもりでした。実際選考を受けた数社は全て通り、一番良さそうなところに就職しました。

エントリーシートや履歴書、面接などいくつか自分のことを話すことはありました。多少盛りながらも正直に話していました。特に立派な成績や功績があるわけでもないですが通りました。準備も最低限、面接練習もESの添削もせず、正直テキトーにやった感は否めません。

それでも受かるし、ガチガチに準備して、質問とかも想定して答えも用意して暗唱しているような人も通る。どちらが良い悪いは無いとは思いますが、どこを観ているのか気になります。まあ当時は売り手市場なんて言われて、求人の方がだいぶ多いタイミングだったのはあるのかもしれません。

運ゲーだったりして

トランプ

ここまで述べたように、短時間で相手のことを理解するのは到底不可能です。

それに面接を行う人事担当の主観もありますし、人によるムラもあります。順番が優秀な人の次だと割増しで劣って見えたり、面接官の気分や体調などで変わるかもしれません。

こう考えると、就活に運ゲー要素が含まれるのは否めないのかもと思います。

もちろんちゃんと見てるでしょうし、運ゲーにならないように工夫もしているでしょうが、100%公平かどうかは何とも言えなさそうです。でも、運も実力の内、なんて言葉もありますし仕方ない部分はあります。

僕としては、この小説を読んだのが就活中とかでなくて良かったなと思いました。こんな風に書いてあると、小説の中の話とはいえ現実に通じることもあると思います。これ就活前に読んでたら、やる気失せてたかも笑。

就活生って異様かも

メモ

今思えば就活生って異様ですよね。

全員で真っ黒の安めのスーツ、革靴、髪型。似たような志望理由、不慣れな敬語。思い出すだけでもちょっと笑っちゃいます。

合同説明会なんか行くと、必死に全部メモしてる人もいました。そんな必死に書かかなくても調べれば出てくるよ、と心の中で突っ込んでました。どうせ受けもしないのにそんな必死にメモらなくても良いのにね。いや受けるのかもしれませんが、合説なんて何百人もの相手に何回も説明するんだから覚えているわけのでちゃんと聞いておけば問題ないのに。

グループ面接では、用意してきたような答えを抑揚は付いているけど明らかに暗唱してる人もいました。そこまでしていなかったので素直にすごいなとは思いましたが。でもそういう人がいたりするので、グループ面接は人の聞くのが面白くて結構好きでしたね。

別にバカにはしてないのですが、一言一句用意するものなのでしょうか。

まとめ

だんだん明らかになっていく過去、途中で変わる視点、事件の真実など読み応えがありました。また、多くの人が経験した、もしくは経験する就活をテーマにしたことで入り込みやすいストーリーでした。リアリティのある部分もあり、共感するところも結構ありました。

就活していた当時を思い出して、確かに異様というか異常だったのかもしれないと思います。でもあの変な時期を経て今があるわけで、何とも言えない気持ちになりました。

ストーリー的には予想が二転三転しながら、良い位置に落ち着いていて、すっきり読み終えられました。

以上です。最後まで読んでいただきありがとうございました。

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